about ルールメイキング / 余白がダートバイクカルチャーを押し上げることについて

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先週末、全日本モトクロスの神戸大会IA1ヒート2で、平田優がコースのショートカットを理由として1周減算になりました。栄えある優勝から、順位は11位へ転落。ランキングも2位から3位へ落ち、大きな影響を与えた裁定になります。全日本モトクロスの統括団体であるMFJではレポートで「しかしレース後、平田にコースショートカットによる1周減算のペナルティが科され、平田の順位が11位に。」といった記事が公表されています。

この写真は、幻のガッツポーズとなってしまいました。

JNCCにおいても、爺ヶ岳でコーステープが切れてしまったことで、大量のライダーによるショートカットがありましたが、自己申告を求めること(異議を考慮する)を前提とした1周減算処理がおこなわれています。JNCCはその競技の特性上、トラブルからショートカットしてピットインすることなどもあり、あえなくペナルティを受けることも少なくない話ですね(2014年小林雅裕、2015年渡辺学がそれぞれ自己申告で1周減算処理)。
 
 
 

規則の記述

MFJのモトクロス規則では

26‒3 コースアウト
ライダーは、走行中、止むを得ず定められたコースを外れ、再びコースに戻る場合、安全確認を行い、外れた地点からコースに復帰しなければならない。ただし、外れた地点からコース復帰することが困難な場合は、直近の安全な地点で、時間に有利とならないように、復帰することが認められる。復帰する場合は、安全確認を行わなければならない。自分に有利となる場所から復帰した場合、または大会審査委員会で有利と判断された場合、コースショートカットとみなし、当該審査委員会にてペナルティーが科せられる。

26‒4 コースのショートカット
コースのショートカットは禁止する。コースをショートカットした場合、その内容に応じてペナルティーの対象となる。ペナルティーの量刑は当該審査委員会にて決定される。

とあります。

JNCCの規則では

失格または1周減算
1 コースショートカット。(原則的にコースクイ1本でも1周減算としますが、状況によって競技委員長の判断により軽減される場合があります)

となっています。
 
 
 

法の余白(クリエイティブの世界から)

「決めたものは、守らなくてはいけない」という精神は、日本人に強く根付いているものですが、この精神が文化や歴史の発達を阻害していることがあります。法は公益や、人権などを守るためにあると考えられますが、その一方で、利害が相反する中、常に社会変化に対応するために、調整を続ける生き物のようなものでもあります。

特にこの考え方は、クリエイティブな方面では強く意識されています。

著作権法は、みなさんの間でも強い法律として認識されていると思いますが、何が何でも「人の著作物と同じならNG」というわけではありません。たとえば、引用。一定のルールをクリアできれば、著作物を許諾無く掲載することが可能です。クリエイションをおこなう際に、何かを参考にすることは当然のこと。また、偶然に似てしまうものなどにも、法はあらかじめ余白を設けています。こういった余白を、一切排除してしまったらどうでしょう。クラシックミュージックですら、成り立たなくなる可能性があります。

クリエイターは法を前に萎縮し、新しいモノは、非常に生まれづらくなり、文化の発展を阻害します。著作権法において、著作権を守る、という利益と、文化を発展させるという利益が相反しているわけです。

著作権法界隈では、著作権法の持つ文化的な阻害を鑑みて、「著作権を著作者が決めた範囲で、解放する」システムが醸成されつつあるほどです。
 
 
 

ショートカットについて

コースアウトしてしまって、都合ショートカットしてしまう可能性は、平地に作られたモトクロストラックに多く含まれています。神戸のトラックは、まさにそれ。ひとたびコースを外れてしまうと、ジャンプのリズムを崩してしまうので、再びコースアウトしたところから戻ることは難しいことです。スーパークロスでは、よくこうしたコースアウトからコース外をゆっくり走ってレースに復帰することがよくありますね。

神戸でも言われていたのは、この点が多かったように思います。
順位に関係のないショートカットならば、ペナルティにならないのではないか」と。
再び規則を確認すると…

外れた地点からコース復帰することが困難な場合は、直近の安全な地点で、時間に有利とならないように、復帰することが認められる

とあります。これは、MFJがあらかじめ余白として規則に設定したものです。

時々、ルールをしっかり決め、厳格に運用する方向へ流れがちですが、これはある意味での思考停止を意味します。決めておけば迷うことがない、というのは、ルールに責任をおしつけているだけに過ぎません。また、厳格になればなるほど、さきほどのクリエイターが萎縮するのと同じで、競技者を萎縮させてしまうのではないでしょうか。新たな創造的なラインどりや、それによって生まれる白熱したバトル、競技者の成長の機会を奪うことは、損失以外のなにものでもありません。
(※平田のショートカットに関しては、どの場所でのショートカットであるか非公表であるため、ここで是非は言及しません)
 
 
 

ルールメイキングがダートバイクカルチャーを押し上げる

レギュレーションは、公平さや、安全を担保する役目をもっているだけでなく、レーシングカルチャーを阻害する要因になりえる諸刃の剣だと考えます。つまり、よきルールメイキングは、よきダートバイクカルチャーを創り出すこともああるでしょう。そのレギュレーションの意図するもの、そしてそれが折りなす効果について、時代にあわせて考え続ける必要があります。

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ジャンキー稲垣

ジャンキー稲垣

株式会社アニマルハウス代表・編集。Enduro.J主宰。国内外のエンデューロを中心に取材活動をおこなっています。17' KTM 250EXC、グランドワゴニアオーナー。2ストとV8で、ご飯3杯食べれます。メールはこちらへ